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最高裁判所第一小法廷 昭和39年(オ)336号 判決 1967年3月02日

上告人(原告・控訴人) 品川燃料株式会社

右訴訟代理人弁護士 田中一男

右訴訟復代理人弁護士 池内勇

被上告人(被告・被控訴人) 鈴木なみ

被上告人(被告・被控訴人) 京都府経済農業協同組合連合会

右両名訴訟代理人弁護士 福岡宗也

主文

本訴請求中上告人の被上告人鈴木なみに対する所有権移転登記抹消登記手続請求に関する部分につき、原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。

被上告人鈴木なみは上告人に対し第一審判決別紙目録記載の建物につき名古屋法務局昭和三四年一一月一二日受附第三二八九一号をもってなされた所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

上告人の被上告人連合会に対する上告を棄却する。

上告人と被上告人鈴木なみの間においては、訴訟の総費用を同被上告人の負担とし、上告人と被上告人連合会の間においては、上告費用を上告人の負担とする。

理由

上告代理人田中一男の上告理由第一ないし第五について

論旨は、要するに、(イ)原判決が、訴外鈴木昭三と被上告人鈴木なみとの間の本件売買契約は詐害行為にあたるとしてこれを取り消しながら、同被上告人に対する所有権移転登記抹消登記手続請求を棄却したのは、不動産登記法一四六条の解釈を誤ったものであり、(ロ)原判決が、被上告人連合会が本件詐害の事情につき善意であったとしたのは事実誤認であり、仮に善意であったとしても、上告人の被上告人連合会に対する請求を棄却したのは、民法四二四条の解釈を誤り、判例に違反するものである、というにある。

不動産登記の抹消登記手続を求める訴は、被告の抹消登記申請という意思表示を求める請求であって、その勝訴の判決が確定すれば、それによって、被告が右意思表示をしたものとみなされ(民訴法七三六条)、その判決の執行が完了するものである。したがって、抹消登記の実行をもって、右判決の執行と考えるべきではなく、右抹消登記の実行が可能であるかどうかによって、右抹消登記手続を求める請求についての訴の利益の有無が左右されるものではない(最高裁判所昭和三八年(オ)第一六〇号同第四一年三月一八日言渡第二小法廷判決、民集二〇巻三号四六六頁参照)。

これを本件についてみるのに、原審の確定した事実によれば、訴外鈴木昭三と被上告人鈴木なみの間の本件売買契約は詐害行為として取り消さるべきである以上、たとえ、本件建物について被上告人連合会のため原判示の抵当権設定登記および所有権移転請求権保全の仮登記が経由されており、上告人の被上告人連合会に対する右登記の抹消登記手続が認容されず、したがって、被上告人鈴木なみの経由した前記登記手続について、その抹消登記手続の実行が不可能であっても(不動産登記法一四六条一項参照)、上告人の被上告人鈴木なみに対する所有権移転登記抹消登記手続を求める請求は、これを認容すべきである。しからば、右と異なる見解のもとに上告人の被上告人鈴木なみに対する所有権移転登記抹消登記手続請求を棄却すべきものとした原判決は破棄を免れず、これと同旨の第一審判決もまた取り消しを免れない。したがって、前掲論旨(イ)は理由がある。

次に、前掲(ロ)の論旨は、原審の事実認定を非難し、かつ、民法四二四条についての誤った見解に基づいて原判決を非難するものであり、所論引用の大審院判例をもって上告人の主張の論拠となし得ないとする原判示は正当である。したがって、論旨は理由がない。<以下省略>

(裁判長裁判官 松田二郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 大隅健一郎)

上告代理人田中一男の上告理由<省略>

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